2018年11月19日
岡山県・西粟倉村は、面積の95%が森林です。
もはや山しかありません。
その西粟倉村には、林業作業に携わる『 山師 』(やまし)が30人もいます。
設計士なども含めると、50人にもなります。
西粟倉村の人口は約1500人なので、30人に1人は林業に関わる仕事をしているのです。
1クラス40人の教室で、将来林業の仕事をする『山師』が1人いる計算になりますね。
では、その山師たちは、一体どんな仕事をしているのでしょうか?
林業と聞いて、あなたはどんなものを思い浮かべますか?
森の中で、チェーンソーを使って木を切るイメージでしょうか?
実は、林業には木を切ること以外にも、たくさんの仕事があります。
作業に入る前に山の地形を知ったり
林業機械が通るための新しい道を作ったり
切り出した木を運ぶのも、
林業の仕事のひとつです。
たとえば、林業機械が通れる道がなければ、作業スピードが下がってしまいますし、
作業に入る前には、どの木を切るのかを決めなければいけません。
そして、切った木を山から運んで、製品に変えれば利益になります。
私たちが思っている以上に、
林業という仕事は、意外にも多くの工程が必要なのです。
それでは、林業をおこなう山師の作業内容を見ていきましょう!
1、作業範囲を決める
まずは、木を切る範囲を決めるために、図面(設計図)を作ります。
林業で言う図面は、家の設計図とはちがい、
山の地形を表したものになります。
測量士の確かな計測をもとにして、
でこぼこや、斜面が入り混じっている地形を平面上に描きだします。
そして、どこに道がつけられているのか、土の硬さや木の種類など、
現場で木を切り出すときに必要な情報を集めます。
それから、山の現場にも行きます。
図面を見ながら、作業を行う範囲を決めて
どの木を切れば良い山に育つのかを考えます。
作業の前に現場を把握しておくことは、どの仕事でも同じですね。
2、作業道を作る
山に林業機械が通れる道が無かった場合は、
新しく作業道を作ります。
この工程を「作業道の開設」といいます。
山には、「この形で、この方向で道をつける」という目印になるものが何もありません。
そのため、まずはどの方向で道をつくるか、どこにカーブをつくるかを決めるところから始めます。
0から、目印を決めるところからがスタートです。
その後、道になる場所に生えている木を切り、平らになるように整えます。
作業内容は道の選定、林業機械の操作、チェーンソーでの伐倒などがあります。
様々なことを同時にしなくてはいけないので、
作業道をつくれるのはベテランの山師だけです。
ベテランというのは、年齢ではなく、経験です。
まずは木の切り方や機械の操作から覚えて、
山ごとの特性を掴み、
経験を積み重ねることで、道をつくるための技術が身に付きます。
今日作った道が、これから何十年も山の通り道となって残り続けるのも、
道をつくる山師の醍醐味です。
3、木を切り出す
作業道を使って山をのぼり、チェーンソーで木を切り出します。
この作業を「伐倒」(ばっとう)といいます。
間伐では、木に優先順位をつけます。
残す木を決めてから、切る木を決めていく方法です。
つまり、これから大きく育っていく木は残し、
成長する見込みの少ない木、病気の木は切ります。
そして、残す木の配置とバランスを考えながら切っていきます。
木々の間隔を広げて、光をより多く取り入れるための間伐なので、
木1本1本を見極める目を養うことが重要です。
人の手とチェーンソー1本だけで、10mにもなるヒノキを5分で倒す山師は格好良く、
山師も「うまい具合に倒れてくれたら気持ち良い」と語ります。
4、規格の長さに揃える
切り倒された木は、作業道に集められます。
木材には3m、4mという規格があるため、規格に沿って切りそろえる必要があります。
そこで、ハーベスタという重機で、木を短く切って丸太にします。
この作業を「造材」(ぞうざい)といいます。
昔の林業では、一つの丸太をつくるのに、チェーンソーで1本ずつ短く切っていました。
チェーンソーでの造材は、少し刃の角度を間違えると、
自分の足を切ってしまうこともあったそうです。
今は、ハーベスタやプロセッサーなど
大きな木でも簡単に持ち上げられる林業機械が新しく出てきたので、
安全+早く作業ができるようになってきました。
機械の操作を覚えたり、免許を取るのに時間はかかりますが、
長い目で見ると、機械を使うほうが作業スピードも効率もアップするのです。
5、丸太を運ぶ
山のあちこちに置いた丸太を一箇所にまとめて、トラックで運び出します。
この作業を「運搬」といいます。
持っていく場所は、木材の集積場です。
集積場の丸太は競りにかけられ、値段がついて売られていきます。
木薫で使う丸太は、工場に直接持っていきます。
工場に運ばれた丸太は、保育園用の家具や遊具に加工して、販売します。
間伐で切り出された丸太は子どもたちの身近な家具や遊具になり、
光が入ることで、山はより強くなります。
子どもたちに 木の薫り を届けられるのも、
木を切り出す山師たちがいるからこそです。
山を知り、山を育てる 職人・山師 (やまし)。
西粟倉村には山しかないからこそ、良い山と、良い山師が育つのでしょう。