2018年9月21日
お盆休みやお正月に、田舎へ帰ることはありますか?
田舎へ行くと、周囲には山が連なっています。
ぼやけた山のシルエットは、どこまでも山が続いているようにも見えますよね。
実は、日本の森林の約40%は人工林であり、そのなかの75%はスギとヒノキで構成されています。
『人工林』(じんこうりん)といわれても、ピンと来ない人が多いかもしれません。
人工林とは、「人の手で木々を育てている森林」のことです。
古くは神社やお寺、近年では住宅を建てるために多くの木を使ったため、
森には木が少なくなってしまいました。
その森に新たに植林した山のことを、『人工林』と呼びます。
山に木の苗を植えていったのは、私たちのおじいさんやおばあさんの世代です。
おじいさん、おばあさんが若いころに、
家や家具の材料として利用できる木を多く植えていきました。
その苗たちには
「大きくなったら、子供たちが木材として使えますように」
という想いがこめてあります。
それがスギとヒノキです。
では、なぜ「スギ」「ヒノキ」という2種類なのでしょうか?
強度が強いケヤキやカシの木も一緒に植えたらいいのに・・・と思わなくもありません。
ということで、人工林にスギとヒノキが多いヒミツをしらべてみました!
その1.木の育ち方
スギの木と言われて思いつく木の形はなんですか?
まっすぐ縦に長く、細長い三角形のような形でしょうか?
『スギ』という名前の由来は、
まっすぐ上に伸びる木という意味の『直ぐ(すぐ)』からきているそうです。
名前の語源になるくらい
天に向かってまっすぐに育つスギヒノキは住宅の柱として最適です。
一般の住宅では、柱や梁などの構造の骨になる部分に木材が使われていました。
柱や梁は、家全体を支えるとても重要な部分です。
その材料には、長くまっすぐで、節の少ない木材が好んで使われます。
植林した当時は住宅の建設ラッシュだったため、
柱に使えるまっすぐ生長する木を植えていきました。
そのため、人工林にはスギとヒノキが多いのです。
逆に、ケヤキやカシの木は、日光をより多く取りこむために、
少しでも日の当たる場所を求めてぐねぐね曲がりながら育っていきます。
そんなケヤキやカシは、枝の重みで折れてしまわないために強度はとても強いのですが、
木材としては曲がっているので加工しにくく、使いづらくもあります。
その2.加工のしやすさと耐久性の高さ
スギやヒノキなどの針葉樹は、広葉樹に比べると「軽い」と言われています。
この「軽い」とは、木材自体が柔らかいということです。
スギとヒノキは柔らかくて加工しやすい。
組子などの複雑な合わせ方で強度をアップできるのも、加工のしやすさがあるからこそです。
また、スギやヒノキの丸太の中心部分は「赤目」と呼ばれ、
屋外でも腐りにくく、シロアリにも強いという特徴があります。
約1300年前に建てられた法隆寺は、
現在でも建設当時のヒノキが使われており、その高い耐久性が分かります。
その3.香りとあたたかさ
ヒノキの独特な香りは、癒し効果があるとされています。
日本人の多くが好きな香りなのではないでしょうか。
ヒノキ風呂や木造家屋にもよく使われていますね。
また、天然素材である木は自然に近く、
優しい色合いが日本人の生活に合っているため、
木造家屋には柱、床、壁などに多くのヒノキが使われています。
スギやヒノキは加工しやすく、腐りにくい。
そしてあたたかみのある優しい雰囲気が好まれ、建築の材料として「もってこい」だったのです。
今も、木材として1番多く利用されています。
このように、スギやヒノキは木材としての需要が高いのも、
植林された数の多さの理由のひとつです。
スギとヒノキが、子供たちの蓄えになりますように・・・
「大きくなったら、この山の木で家を建てればいい」
「嫁入り道具はこの木を切ってお金にして買えばいい」
と願った先代たちは、
住宅や家具など幅広い用途で使える木材としてスギやヒノキを、
そして、木の特性をきちんと理解して
「使える木」に育つよう適材適所で植える木を決めたのでしょう。
その木々を無駄にしないためにも、
先代の想いに応え、
私たちが受け継ぎ
次の世代へ託していかなければならないのだと思います。