もっくんのブログ

2018年9月25日

植える場所によって値段が変わる?スギとヒノキの違いは木の性格にあった!

前回は人工林にスギやヒノキが多いワケを調べていきました。
(→「森の40%!『人工林』にスギ・ヒノキが多いのはなぜ?」

人工林のスギとヒノキは、先代の
「大きくなったら、子供たちが木材として使えますように」
という想いから、植林されていたんですね。

ところで、スギとヒノキの違いって知っていますか?

植林するときに「スギ」「ヒノキ」という2種類に分けたのはなぜなのでしょうか?
スギだけの山、ヒノキだけの山があってもいいように思います。

その理由は、それぞれの木の特徴と山の地形にありました!



  その1、葉っぱの形

スギとヒノキは同じ針葉樹ですが、違いが分かりやすいのが、特徴的な葉っぱの形です。

共通しているのは、小さな葉がうろこ状に並んで広がっていること。
でも先端の部分が大きく違います。

ヒノキの葉 ヒノキは丸く、手のひらを広げたような形をしています。
水槽によく入れてある、水草のようにも見えますね。

大きく広げた平らな葉っぱは、日光をたくさん吸収できるので、光合成が効率よくおこなえます。

スギの葉 スギはギザギザのとんがった形をしていて、針のようです。
葉先を触るとチクチクしています。

この攻撃的な葉の形は、新芽を食べにくる虫が嫌がる形として進化したのでしょうか?

実際に山に行ったときには、地面に落ちている枯葉をちらっと見て
「ああ、これはヒノキだね」「いやいや、この木はスギでしょう」
と樹木博士みたいに言うのもいいかもしれません。



田山における谷と尾根の違い   その2.植えてある場所

山は、絵で書いたような三角形をしているわけではなく、
でこぼこの斜面と窪地が入り組んで出来ています。

その中で窪地になっている場所を「谷」と呼び、
頂上から続いている凸形状の場所を「尾根」と呼びます。

人工林の山には、谷にスギ、尾根にヒノキが植えてあります。
その理由は、スギとヒノキの木の特性にありました。

ヒノキが尾根、スギが谷に植えてある理由 雨が降り、水が流れる山では、栄養(水・微生物)や土も一緒に谷のほうへと流されていきます。

谷は窪地になっているため豊富な栄養が集まり、溜まっていきます。

スギは、栄養がたくさんある場所が好きなので、谷のほうがすくすく育ちます。
また、スギの根はまっすぐ下に伸びていく習性があるので、
ふかふかな土が蓄積されていく谷が最適です。

逆に尾根では、栄養と一緒に土も流されて、ごつごつした石の多い土になります。

ヒノキの場合は、栄養が少なくても立派に育つので、尾根に多く植えてあります。
大きな石ばかりの尾根でも、ヒノキはいろんな方向にたくさんの根を伸ばすことができます。

くもの巣のように張り巡らされた根で、土の地盤を支えているため、
ヒノキは土砂崩れの防止にも一役買っています。



スギとヒノキの単価の違い   その3.木材としての価格

価格といっても、山に植わっている木1本の価格ではなく、
山から切り出して丸太にして、市場で販売するときの価格です。

なんと、スギとヒノキの価格では、倍も価格が違うんです!

その理由は、木の育つスピードの違い。

スギは生長が早く、ぐんぐん伸びていきます。
光合成によって二酸化炭素を酸素に換える力が強く、
地球温暖化に対してとても有効な木です。


よく食べて、どんどん大きくなるスポーツマンタイプですね。

苗を植林してから、間伐を2~3回ほどおこない、約40年で収穫できる太さになります。
このとき、木を収穫することを主伐(しゅばつ)といいます。
スギはほかの木と比べると強度はそれほど強くなく、単価は5段階であらわすと3になります。
スギのなかでも、縄文杉、屋久杉などの有名なブランド品は相場よりも高くなります。

ヒノキの場合は、スギと比べると木の生長は遅くなります。
マイペースなのんびり屋さんです。

植林してから、間伐を2~3回ほどおこない、約50年で主伐の時期になります。
成長が遅いぶん長い年月をかけて育つので、
中身がしっかりとした良い木材になります。


スギの木材加工の様子 しかも、ヒノキは柔らかくて加工しやすいので、木工製品の材料として重宝されています。
香りが良いため、ヒノキ風呂や木造家屋にもよく使われますね。
このように、ヒノキは木材としての需要が多いため単価は5段階で5になります。

市場での価格にすると、スギの倍になることもあります。


だったら、
  山の木を全部ヒノキにしたら?
と思いますよね。

しかし、山のすべての場所にヒノキを植えていくと、
谷にも尾根にもヒノキが植えてあることになります。

尾根のヒノキは立派に生長しますが、谷に植えてあるヒノキは栄養過多になってしまうのです。

多過ぎる栄養はヒノキに悪影響をあたえ、とっくり型の変形した形に育ちます。
甘やかされて育つと、木も歪んでしまうんですね。

歪んだ木は、年輪や木目も美しくなく、加工もしにくくなるので、みんな欲しがりません。
単価は5段階で最低ランクの1になってしまいます。

間伐された森 谷にはスギ、尾根にはヒノキ

「大きくなったら、この山の木で家を建てればいい」

「嫁入り道具はこの木を切ってお金にして買えばいい」

と願った先代たちは、
住宅や家具など幅広い用途で使える木材としてスギやヒノキを。

そして、木の性格をきちんと理解して
「使える木」に育つよう適材適所で植える場所を決めたのでしょう。

その木々を無駄にしないためにも、

先代の想いに応え、

私たちが受け継ぎ、

次の世代へ託していかなければならないのだと思います。