2018年10月24日
岡山と鳥取の県境、山に囲まれた西粟倉村に、「 木薫 」という会社があります。
地元を中心に林業、山の管理作業をし、
その際に出た間伐材から、子供向けの家具と遊具を製作・販売している会社です。
商品の材料(木材)を自分たちの手で切り出し、
材料→製品→販売→メンテナンスを一貫しておこなうことで、
6次産業化を1社の中で実現しています。
社内には3つの部門があり、大きなひとつの流れの中で、
1次産業、2次産業、3次産業がうまく連携しています。
森林整備部のお仕事は
山の間伐と、切り出した丸太を製材所まで運ぶことです。
林業専用機械が通れるように、作業道の整備もおこないます。
木工加工部では
保育園に納品するイス、テーブル、ロッカー等と園庭の木製遊具を作っています。
使う用途に合わせて、オーダーメイドの製品を手作りします。
営業部は、ユーザーと直にお話します。
ユーザーの要望を聞き取り、実現させるための提案をします。
それが製品なら設計図を作り、自ら工具を持ちメンテナンスをすることもあります。
木薫に入った新人さんが、はじめにする研修は、山での林業作業です。
たとえ女の子でも、力仕事以外で、危険ではない作業を体験します。
最大45度の斜面を登ったり、降りたり。
ワイヤーとロープをあっちへ、こっちへ。
このワイヤーとロープは、丸太を斜面から林道へ出すときに、
切った木にくくりつけるためのものです。
ワイヤーを木にくくりつける作業は、「玉掛け」という特別な資格が必要になります。
(↑この資格は木薫で取れます)
チェーンソーが使える人は、実際に木を切ります。
(↑チェーンソーの資格も木薫で取れます)
山の所有者から、大切な『 財産 』を預かっているので、
「立派な丸太になるのはどの木か」と常に考えながら、
山に残す木々の育ち方を見極めて、
木を切っていかなければなりません。
山に行き、林業について身をもって経験する。
そうすることで、自分の体で得た知識を、自分の言葉でアウトプットできるようになります。
話を聞くだけでは絶対に知りえない「なにか」を得ることができます。
この森林整備をスタートにして、木薫は始まっています。
林業を起点にし、木工、営業へとつながるのです。
山から切り出した丸太を、製品に仕上げるのは、木工職人の仕事です。
木薫は、子供向けの家具と遊具を専門にしています。
なので、細かいところにも手は抜きません。
たとえば、家具の表面は丁寧に研磨すること。
子どもの柔らかい手は、小さなトゲ(ささくれ)でも簡単に刺さります。
トゲが刺さったら痛くて、抜くのも怖くてさらに大泣き、なんてこともあります。
ささいなことですが、作るときに丁寧に磨いて、トゲを除いていたら防げたことです。
「ぶつからない」「落ちない」などの動的な安全対策はしっかりした上で、
「尖ったカド」「表面のザラザラ」という静的な危険も排除します。
それから、ひとつひとつをオーダーメイドで作ることを大事にしています。
自分の体に合ったテーブルとイス
玄関にジャストサイズのくつ箱
デッドスペースにちょうどよくはまる棚
ぴったり収まると、きれいに見える。
それがホンモノの木で作ってあると、あたたかみと優しさもプラスされます。
そのために、ひとつひとつをオーダーメイドで、手作りしています。
ユーザーも、自分の理想が実現できたら、喜んでくれます。
木工職人が、自分で作った製品を納品したとき、
ユーザーの喜ぶ顔を見られるのが、
職人にとっても喜びの瞬間です。
エンドユーザーである、保育園の先生や子どもたちと、
直接話して、生の声を聞く機会もたくさんあります。
ユーザー・営業・木工職人・山が密接につながっているからこそ、
ユーザーの要望をすぐに製品に反映できます。
そして、ユーザーが満足する、職人も作りがいのある製品が出来上がるのです。
森林整備部が切り出した木で
木工職人が家具を作り
営業がユーザーと繋げる
待ちわびた商品が届いたとき、
製品に使われている木や山について興味を持つ人もいるでしょう。
そのときに、自分の言葉で、山や木のことを伝えるのが、木薫の使命です。
先代が守ってきた山を
自分たちの手で木を切り出す理由を
そして、それを子どもたちへ託す意味を
受け継ぎ、残していかなければならないのです。