2023年5月8日
最近、テレビやネットニュースでよく取り上げられている「自伐型林業」
多くの場合、『大規模伐採よりも「自伐型林業」をしよう!』と語られています。
ここに出てきた「大規模伐採」とは、木を全部切る「皆伐」のことです。
「皆伐」と「自伐」
どちらも同じ「伐」の字が付きますが、対照にある意味の言葉ではありません。
「皆伐」の反対語は「間伐」であり、「自伐」の反対語は「委託」等が当てはまります。
どれも山を整備する方法・手段の名称です。
山の整備方法はたくさんあり、全部切るのか・1本も切らないのか……だけではありません。
・どのように木を切るのか
・だれが木を切るのか
いろんな選択肢・組合せがあるため、ひと言で説明するのは難しいものです。
「今の林業はすべて〇〇というやり方だ!」と一纏めにはできません。
今回は現代日本でおこなわれている整備方法について、それぞれ詳しく説明します。
まずは、どのように木を切るのか。
伐採方法は大きく分けて、皆伐と間伐のふたつがあります。
皆伐
決められた範囲にある木を全部切ることです。目的は、大きく育った木を収穫するため、木の更新をするため、更地を作るため、災害復旧です。
新しい苗(無花粉スギ、小花粉スギ、広葉樹等)を植林するためには、一度皆伐する必要があります。
皆伐したまま放置すると土砂災害の原因になる為、植林が必要です。
皆伐したまま放ってある場合は、なにかしら事情があります。たとえば、何度植えても動物が食べてしまう、植林できる季節まで待っている、山林所有者の意向が変わった、事業者に問題が起こった、採算が見込めない等です。
間伐
良い木を山に残すため、木を間引く目的で切ります。頻度は数年に1度。
間伐の方法も数種類あり、切る割合、どの場所の木を切るか、どんな状態の木を切るかを指定されてます。
しかし、間伐だけしていてもダメです。その理由は林齢管理、炭素固定、CO2吸収率etc.ありますが、今回は割愛します。
現行林業としては、面積の割合で68%は間伐作業をおこなっています。
つづいて、だれが木を切るのか。
委託、自伐型と、意味が微妙に異なる自伐林家の3種類があります。
委託
山林所有者が、森林組合・企業・市町村等に山の管理を委託することです。山林所有者と事業者で契約が結ばれます。
実際の作業は、委託された事業者がおこなう場合もあれば、再委託された下請け事業者がおこなう場合もあります。公有林の場合は入札で決まることもあります。
委託された事業者が勝手に整備方法を決めることはできず、山林所有者と相談しながら山を管理していきます。
地域の山の特性や事情を把握している森林組合や市町村であれば、いろんな相談もしやすいですね。
自伐林家
明確な定義はありませんが、「山林所有者が親から継いだ山を自分で整備する」というイメージですね。
届け出をきちんとしていれば、個人で好きなように山を管理できます。主目的は木材生産であったり、キノコの生産であったり、森林環境の維持であったりと様々です。
高齢化、後継者不足、作業減少等の影響で、2003年には17.7万戸あった自伐林家ですが、2020年には2.7万戸にまで減っています。
自分1人もしくは一家族という少人数で作業するため、1人でも欠けたり、後継者がいないと林業を継続するのが難しくなります。
自伐型
自伐林家よりも意味の範囲が広く、山を所有しない人も含まれます。作業は1人で、夫婦で、少人数チームでと様々です。
山林所有者と直接交渉し、個人的に山を預かり作業します。個人と個人で契約が結ばれます。主目的は木材生産です。
特徴は、間伐サイクルが長いこと、小型重機のみを使うことです。
一般的な間伐サイクルが10年であれば、自伐型はそれよりも長く期間を空け、切る本数も少ないです。
林業は木を切るだけでなく、機械整備・道付け・地域柄等の知識と経験が必要なため、自伐型林業をおこなっている人同士のコミュニティで林業を学んでいます。
以上、山の整備方法の解説でした。