林業への想い

想いに応えるために

世界的には、森林破壊で森林が減少している、木を切るのは環境破壊だ。と言われていますが、日本の山は、そうではありません。日本は国土の66%が森林で、そのうち40%は戦後の人々の手で植えられた人工林です。戦争で焼野原になった地域では、戦後たくさんの住宅が新たに建てられ、そのために多くの木材が使われました。同時に、木材という資源を枯渇させないように植林をしてきました。

間伐前と間伐後の違い

植林から約50年たった今、人工林は間伐の時期に入っています。幼苗のうちは密集させて植え競争させ、適切な時期に選別して育てます。そうすることで、密度の高い良い木へと成長するのです。良い木はしっかりと地中に根を張り、倒木や山の土砂崩れを防ぐことにも繋がります。また、間伐で得た木材は建築や家具に利用できます。
ただ、木は育つまでに50年、100年と長い時間がかかります。今、植林した苗が少しでも子や孫の蓄えになれば・・・
それが植林をした先代の想いです。

しかし近年、安い外国産材が大量に輸入され、国産の木材を求める人は減少しています。需要がないということは、間伐をしても木材が大量に余ることになります。だからといって間伐をしなかったら、木が密集した暗い山になってしまい、光が山の隅々まで行き届きません。
結果、木が光合成をおこないにくくなり、良い木が育たなくなるのです。さらに、下草の生えない土がむき出しの状態になるため倒木や地すべり・土砂崩れの危険、地球温暖化にも影響します。また、山が育たないと動物は住みにくくなり、食べ物を求めて里山へ下り、害獣被害の原因にもなりかねません。

先代の想いに応えるために
自然の生態系を守るために
木を切り出し、山を受け継いでいく。

それが、木薫の林業です。

未来の人に託すために

木薫が携わる山のほとんどは、地元の人が代々受け継いできた山です。大切にされてきた山を次の世代へ託すために、木薫はホンモノの無垢材を子どもたちに届けています。
間伐を継続して行うには、木材を売ることで生計を立てていかなければなりませんが、一般的な木材の売り先である木材市場では買い手が木の値段を決めるため、買い叩かれてしまうことも多くあります。木の値段が安いと、山主さんにも利益は入らず、間伐をして木を売っても手元に残るのは微々たるものです。むしろ、間伐にかかる人件費などの諸経費を支払うと赤字になることさえあります。
そこで木薫は、間伐で切り出された木材を製品に加工し、木材に付加価値を与えることによって正当な価格で売買し、山主さんにも利益を還元するといった木材の“プラス”の循環を行っています。また、木材に新たに与えられた付加価値が、製品のクオリティやニーズへの柔軟性に繋がっています。

木材の循環の中で、要となる山の管理作業は、主に3つです。

➀作業道の開設

間伐をするためには林業機械が欠かせませんが、機械の通る道がなければ安全に作業をすることができません。そのため、木を切る前に作業道を開設することから始めるときもあります。作業道は山にキズを入れてしまう行為なので、最低限かつ最適なルートを導き出して開設する必要があります。作業道の計画は雨水との戦いでもあります。降った雨がどこに溜まって、溜まった水はどこを流れていくのか・・・などを見極めながらルートを決定します。作業道は間伐作業以外にも、山林管理道としての役割もあり、この先ずっと使われていく道になるので、「自分たちがよければいい」という考えでは良い作業道にはなりません。

ザウルスロボで作業道の開設

➁間伐

間伐ではチェーンソーや重機を使って木を切り出します。安全に作業を行うために、ヘルメットやチェーンソーパンツなどを必ず身に着けます。ひとつの山で木を切る本数は違いますが、全体で30%、この区画は40%などの目安を山主さんの希望に合わせて決めます。目安が決まったら、現場の山師は周囲の木の成長に配慮しながら木を切る間隔を決め、1本1本の木の太さと状態、残した木のバランスを見極めて切り出します。どの木がこれから立派に成長していくのかという50年後の未来を見据えた作業でもあります。急斜面の山をサクサク登って行き、木の間を縫うように倒木する様子は圧巻です。

チェーンソーでの伐採

➂木材の搬出

切り出した木材を山から搬出するときは、一部の材として向かないものは山に残したり、作業道を支えるための構造材として地中に埋めます。そこが小動物や昆虫、菌類の住処となり、栄養は地中に流れて植物が育つのを手助けします。運搬の際には枝を切り落とし、規格の長さに切りそろえてからフォワーダ(写真左:黄色の運搬車)に積みます。山から運ばれた木材は木薫の家具や遊具になったり、製材所に納品されたりします。遊具で使われる枝付きのぼり棒は、山師が切り出した木を使っています。もし、山主さんが次の世代に山を相続したときに、「ここの山、誰がこんなにしたんや」なんて言われたくありません。だから、適当なことはしません。作業道を作るルートの計画から一本の木を切って搬出するに至るまで、確固たる理由と信念を持って取り組んでいるのです。

木材の搬出